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Rを通じて統計学を学ぶ備忘録ブログ

SPSSからRに移行したい私のような人向けのR解説ブログ兼学習用備忘録。

大学の時にもっと勉強しておけばよかったマーケティング・リサーチ〜その4〜

マーケティング

前回はサンプリング調査設計方法について、おおまかにまとめましたが、今回は調査票の中身の部分について、書いています。調査票の質問項目なんて簡単では?と思っているあなた、それは調査票の深みをまだ知らないだけです。深みを知ってしまったら最後、アンケート調査はやりたくなくなるとおもいます。笑 また、基本的な名義尺度から比例尺度などの説明は省略いたします。

調査票作成の基本的な流れとして、マーケティング・リサーチで何を明らかにしたいかを明確化し(前々回の話)、何をどうやって質問するかを検討する。そして、質問の順序やワーディングなどをチェックし、プレテストを行い、不備を修正する。これが基本的な流れですが、時間がかかります。なので、ビジネスでも研究でもそうですが、調査実施日の半年前くらいから、準備作業に入る必要があります。精度の高いマーケティング・リサーチを行うためには必要不可欠です。

心理的態度

マーケティング・リサーチおけるサンプリング調査では、回答者の「何」を測定するのでしょう。それは、「心理的な態度」です。例えば、ブランドの認知度を調べるとき、ブランド名をどの程度認知しているのか、という「心理的な態度」を測定しますし、新商品のリサーチであれば購入意欲や商品満足度という「心理的な態度」を測定します。

「態度」とは心理学的な構成概念のことで、次の3つの構成要素に分けることができると言われています。認知成分、情緒成分、行動成分の3つです。簡単に説明すると、甲子園の高校野球についての態度は「甲子園大会」「高校生ナンバーワンチームを決める大会」という認知成分があること、「ドラマッチックな試合展開」という感情成分を持っていること、そして、何度でも足を運びたくなるという行動成分から、態度というものは構成されているという考えです。

認知成分

あるブランドの商品やサービスに対して、消費者が持っている情報を表現する成分。つまり、認知度や知名度、評価など。消費者行動論では信念(belief)とも言います。

情緒成分

あるブランドの商品やサービスに対して、消費者が持っている情緒、つまり感情を表現する成分。つまり、ブランドの選考度や好意度など。

行動成分

あるブランドの商品やサービスに対して、消費者が持っている行動の期待値。つまり、あるブランドの購入意欲や利用意図の度合いなど。

そもそも、態度というものは上記のように分解して考えることができますが、あくまでも抽象的な概念なので、捉えにくい印象を持つかもしれませんし、加えて、「心理的な態度」というのは絶対的な0をもつ尺度ではないため、正確に測定することが困難なのです。以下のようなリッカート尺度の5件法があったとします。

1:全くそう思わない 2:そう思わない 3:どちらでもない 4:そう思う 5:非常にそう思う

「2:そう思わない」の倍は「4:そう思う」とは言えませんし、「2:そう思わない」と「3:どちらでもない」の間の感覚は、「人によって」異なります。

したがって、態度の測定というのは困難なのですが、なぜマーケターは態度の測定にこだわるのでしょうか。それは、態度が「行動」の予兆を示しているからです。ブランドの認知度が高いブランドと低いブランドがあるとすると、認知度(態度)の高いブランドの商品を「購入(行動)」すると予想できます。それらの行動予測を検討するためにも「態度」を測定する必要がある、というわけですね。

信頼性と妥当性

質問項目の作成においての注意点は、「妥当性」「信頼性」という概念を認識しておくことです。言葉の説明は以下のとおりです。マーケティング・リサーチの分析では、「質問が命」なので、質問文を作るときは、細心の注意を払うことが求められます。

信頼性:測定した結果が一貫しているかどうか。つまりは、測定精度のことです。 妥当性:測定しようと思っているものを正しく測定できているか。つまり、意図通り測定できたかどうか、ということです。

信頼性

信頼性とは、測定した結果がの精度のことです。その精度を評価するポイントとして、安定性と一貫性という指標でチェックします。

安定性:同一人物に、同一の質問を行った際に、同一の結果がでるかどうか。 一貫性:同一人物に、同じような質問を行った際に、同しような結果がでるかどうか。

このような考え方を加味した上で、信頼性は数値で表現されます。信頼性係数は0~1までの数値をとり、1に近いほど、信頼性があると評価されます。測定手法としては様々ありますが、「クロンバックのα係数」という、一貫性に重点を置いて評価する方法がよく用いられます。以下、計算式です。αは0.8以上が良いとされています。 daum_equation_1484360246227

妥当性

妥当性とは、測定しようと思っているものを正しく測定できているか。つまり、意図通り測定できたかどうか、ということです。内容的妥当性、基準連関妥当性、構成概念妥当性という3つの考え方があります。

内容的妥当性:質問内容が果たして本当に自分が調べたいことを調べられているかを検討するときに用いる。 基準連関妥当性:作った質問内容と関連のある質問内容の相関があるかどうかで、妥当性を検討する。 構成概念妥当性:何らかの要因を考えた上で、この要因を組み合わせて意図する概念を構成できるかを検討する。

ワーディング

ワーディングとは、言葉遣いのことです。言葉一つで回答に大きく違いが出たりします。また、質問者と回答者をつなぐ唯一の媒体なので、言葉遣いは非常に重要です。

曖昧表現

質問文を具体的にすることは重要です。例えば、このような質問をあなたが尋ねられたらどうでしょうか。

あなたは、一億総活躍社会は望ましいですか、望ましくありませんか?

一億総活躍社会という言葉が指し示す意味がわからない回答者にとっては、もはや答えようがありません。このように質問者が理解しているからといって、回答者も理解しているとは限りません。そのため、このようなギャップが発生させないためにも、質問文には注意を払いましょう。 NHKの放送基準は「典型的な視聴者は、50歳の専業主婦で高卒だと思え」と言われています。これは、50歳の専業主婦で高卒の方が理解できれば、他も理解出来る、ということです。かなり失礼な表現ですが、自分が回答者になったつもりで、質問文は考えましょう。

難しい言葉

さきほどの一億層活躍社会もそれにあたるかもしれませんが、専門用語や業界言葉は控えるべきです。曖昧な言葉、難しい言葉もそうですが、調査票の中で説明するか、質問の前文に入れるなりして、意味を共有しましょう。

ステレオタイプ

社会情勢を訪ねる調査で、質問文にあらかじめ評価的なニュアンスが含まれていると、回答者の回答に無意識に影響を与えてしまいます。

あなたは天下りについて、どう思いますか?

このような評価的なニュアンスが含まれていると、回答は自然と悪い評価に偏ってしまいますので、天下りではなく「公務員の民間への再就職」などの言葉に変換する必要があります。また、質問の語尾「〜に賛成ですか?」という質問文も「〜はどう思いますか?」に変換すべきです。

ダブル・バーレル

1つの質問文の中に2つ以上の意味が含まれている場合のことを指します。

あなたは家事や育児をする男性について、どう思いますか?

この質問だと、回答者は「家事をする男性」なのか、「育児をする男性」なのか、どちらの男性について評価すればいいのかわからなくなってしまいます。このような場合であれば、「家事をする男性」と「育児をする男性」に分けて質問をすればいいと思われます。

インパーソナルとパーソナル

回答者自身のことを聞く質問をパーソナル質問、回答者の一般的な態度を聞く質問をインパーソナル質問といいます。質問項目を作る際はどちらを聞くのかを意識しましょう。下記のような例です。

パーソナル:あなたは戦争への自衛隊の派遣を支持しますか。 インパーソナル:戦争への自衛隊の派遣を継続するべきですか。

イエステンデンシー

回答者が、「質問者はこういう風に答えてほしいだろう」と推測を立てたり、「世間的にはこう答えるべきだろう」と考えて回答してしまう傾向のことです。下記のような例です。

世間的には◯◯と言われていますが、あなたはどう思いますか?

明らかに、〇〇に対して、肯定的に答えるように促されているため、質問文としては不適切と言えます。

質問の順序

キャリーオーバー効果

前質問のために、後質問に対する回答者の回答にゆがみが生じることを意味します。例えば、以下のような例です。

あなたは温暖化が進行していることを知っていますか? ↓ あなたは、温暖化を促進するエネルギー資源の消費を進めていくことは賛成ですか、反対ですか?

このように質問を続けると、温暖化にたいして、ネガティブな回答はしにくくなってしまい、現実をアンケートにうまく反映することはできなくなります。また、回答者の属性を尋ねる場合、その質問は最後に持っていきましょう。

逆転項目の処理

細心の注意を払ったはずが、質問が逆転項目になっている・・・ということはよくあります。気にせず、上下を逆転をさせればいいだけなので、そんなに気にする必要はありません。

以上が、質問票を作成する段階で、注意を払わないといけないポイントです。はぁ〜マーケティング・リサーチって大変ですね。